武陵源／中国悠久の時と自然が創った壮大な奇岩の森

1992年に世界遺産に登録された武陵源は中国湖南省に位置し、仙境と呼ぶにふさわしい大自然が広がります。中国初の国家森林公園・張家界国家森林公園を中心に、天子山自然保護区、索渓峪自然保護区などからなり、総面積は約369㎢。高さ200mを超える石柱が3,000以上もそそり立つ奇観は、3億8000万年前の海底が地殻変動により隆起し、自然の力が気の遠くなる歳月をかけてつくりあげました。

なかでも天子山自然保護区は武陵源随一といわれ、雲海に浮かぶ壮大な奇岩の森はまさに絶景。ロープウェイを利用すれば「峰三千、水八百」と称えられる雄大な景観を容易に楽しむことができます。張家界国家森林公園も標高1,200mの黄石寨山頂からは、深い森と岩峰群が織り成す山水画さながらの世界を一望に収められます。また、自然がつくり上げた岩峰と岩峰の間に架かる地上約357mの天下第一橋、太陽に照らされると光り輝き垂直にそそり立つ金鞭岩など、大自然の造形の妙に圧倒されます。

この荒涼とした武陵源は、近年まで少数民族がひそかに隠れ住む辺境の地でした。人がたやすく立ち入れない険しい山岳地帯であったことが幸いし、手つかずの大自然が今に残され、氷河期を生き抜いた古代樹をはじめ3,000種以上の植物や、絶滅危惧種を含む希少動物も多く生息しています。わきたつ霧や雲海に包まれ天を突く奇岩群、その幽玄の世界をぜひとも自分の目で確かめたいものです。