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世界遺産 〜The World Heritage〜

第300回記念 世界遺産の在り方とは 人類の宝として保護し守るという目的を 今こそ原点に立ち返り考える

第300回記念

世界遺産の在り方とは

人類の宝として保護し守るという目的を 今こそ原点に立ち返り考える

世界遺産の在り方とは 世界遺産の在り方とは 世界遺産の在り方とは 世界遺産の在り方とは 世界遺産の在り方とは

Story

登録競争の労力を真に残したい遺産を守る努力に

ユネスコの世界遺産の登録数が1,000件を超え(2018年7月現在1,092件)、様々な問題も生じています。世界遺産への登録が観光など大きな経済効果を生み出すこともあり、登録競争は激しさを増すばかりです。世界遺産の本来の目的は、地球上にある唯一無二の遺産を、人類共通の宝として保護し守っていくことでした。今こそ原点に立ち返り、世界遺産の在り方を考えるよい機会ではないでしょうか。

他国の調査員に評価される自国の遺産

世界遺産には文化遺産、自然遺産、その両方の要素を備えた複合遺産の3つがあり、1972年に採択された世界遺産条約にもとづき、条約加盟国から推薦された候補地を、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)とIUCN(国際自然保護連合)の国際的な専門家集団が登録にふさわしいかどうかを調査・評価し、年1回開かれる世界遺産委員会で登録の可否が決まります。ただ調査する専門家は、全く異なる文化を持つ外国人であり、自国が推薦する遺産の価値が正当に評価されないこともあります。たとえば日本が推薦していた「武家の古都・鎌倉」は、2013年にICOMOSの調査によって不登録の勧告を受けました。主な構成資産が神社や寺院であり、外国人調査員の目には奈良や京都と同じように映り、鎌倉の独自性が認められなかったのかもしれません。

国を超えて残したい遺産を訴え守る

近年は評価の不均衡を是正するための取り組みも行われ、文化遺産については歴史的建造物や歴史的遺跡だけでなく、文化的景観、産業遺産、20世紀建築も評価の対象となりました。日本の例でいえば2007年登録の「石見銀山遺跡とその文化的景観」、2014年登録の「富岡製糸場と絹産業遺産群」、など。また、20世紀建築として2016年に登録された東京・上野の「国立西洋美術館」は、フランスが代表となり、日本を含む7か国が共同で推薦した「ル・コルビュジエの建築作品」17施設の1つ。国の枠を超えて後世に残したい遺産を推薦し、守っていくことの必要性を訴えたよい先例となりました。

登録はゴールではなくスタート

世界遺産には「負の遺産」もあり、「アウシュヴィッツ強制収容所」や広島の「原爆ドーム」がそうです。戦争の悲劇を後世に伝え、人類が二度と愚かな過ちを繰り返さないために世界遺産に登録されました。しかし今も世界各地でテロや戦争は絶えず、異常気象や過度の開発など、世界遺産は様々な危機に直面しているのが現状です。それらは「危機遺産」に登録し、国際的な援助を受けて救済する仕組みになっています。世界遺産への登録は、ゴールではなくスタート地点に立ったということ。登録件数を無暗に増やすのではなく、登録された遺産をいかに守り後世に残していくかに意義があります。すでに1,000を超えた普遍的価値を持つ遺産が地球上にはありますが、理解されず正当に評価されていない人類の宝が、まだまだ存在するかもしれません。本当に残すべき唯一無二の人類の遺産は何か、今一度、世界遺産の在り方を見直す時期に来ているのではないでしょうか。

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他国の調査員に評価される自国の遺産

世界遺産には文化遺産、自然遺産、その両方の要素を備えた複合遺産の3つがあり、1972年に採択された世界遺産条約にもとづき、条約加盟国から推薦された候補地を、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)とIUCN(国際自然保護連合)の国際的な専門家集団が登録にふさわしいかどうかを調査・評価し、年1回開かれる世界遺産委員会で登録の可否が決まります。ただ調査する専門家は、全く異なる文化を持つ外国人であり、自国が推薦する遺産の価値が正当に評価されないこともあります。たとえば日本が推薦していた「武家の古都・鎌倉」は、2013年にICOMOSの調査によって不登録の勧告を受けました。主な構成資産が神社や寺院であり、外国人調査員の目には奈良や京都と同じように映り、鎌倉の独自性が認められなかったのかもしれません。

国を超えて残したい遺産を訴え守る

近年は評価の不均衡を是正するための取り組みも行われ、文化遺産については歴史的建造物や歴史的遺跡だけでなく、文化的景観、産業遺産、20世紀建築も評価の対象となりました。日本の例でいえば2007年登録の「石見銀山遺跡とその文化的景観」、2014年登録の「富岡製糸場と絹産業遺産群」、など。また、20世紀建築として2016年に登録された東京・上野の「国立西洋美術館」は、フランスが代表となり、日本を含む7か国が共同で推薦した「ル・コルビュジエの建築作品」17施設の1つ。国の枠を超えて後世に残したい遺産を推薦し、守っていくことの必要性を訴えたよい先例となりました。

登録はゴールではなくスタート

世界遺産には「負の遺産」もあり、「アウシュヴィッツ強制収容所」や広島の「原爆ドーム」がそうです。戦争の悲劇を後世に伝え、人類が二度と愚かな過ちを繰り返さないために世界遺産に登録されました。しかし今も世界各地でテロや戦争は絶えず、異常気象や過度の開発など、世界遺産は様々な危機に直面しているのが現状です。それらは「危機遺産」に登録し、国際的な援助を受けて救済する仕組みになっています。世界遺産への登録は、ゴールではなくスタート地点に立ったということ。登録件数を無暗に増やすのではなく、登録された遺産をいかに守り後世に残していくかに意義があります。すでに1,000を超えた普遍的価値を持つ遺産が地球上にはありますが、理解されず正当に評価されていない人類の宝が、まだまだ存在するかもしれません。本当に残すべき唯一無二の人類の遺産は何か、今一度、世界遺産の在り方を見直す時期に来ているのではないでしょうか。

Photos

世界遺産|富岡製糸場
▲今もなお明治5年の操業当初のままの形で残ってる富岡製糸場
世界遺産|国立西洋美術館
▲「無限成長美術館」構想に基づき、ルコルビュジエが基本設計を行った国立西洋美術館
世界遺産|アウシュヴィッツ強制収容所
▲アウシュヴィッツ強制収容所の入口に掲げられている「ARBEIT MACHT FREI (働けば自由になる)」の一文
世界遺産|原爆ドーム
▲人類史上初めて使用された核兵器の惨禍を伝える原爆ドーム